銀行・信用金庫・信用組合への未経験転職は厳しい?転職者が金融業界のおすすめポイントと注意点を解説

- 金融機関への転職って難しそう
- 未経験者でも仕事できるの?
金融業界は高収入で堅実。学生の人気就職ランキングでは、毎年国内のメガバンクが上位を占めています。倍率の高い就職偏差値の高い業界。そんなイメージが強いかもしれません。
「未経験者の自分が働いても続けられるかな?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
金融業界は研修制度がしっかりしていて、未経験でも働ける環境が整っています。ファイナンシャルの知識も就職後に身に付けることは可能。
ただ、ノルマに厳しいですし、書類仕事は大変細かい。個人情報や法令遵守について、他の企業よりもずっと厳しい。こうした働き方にストレスを覚える人もきっと多いはず。
これから金融業界に未経験で転職しようと考えている人は、デメリットも把握した上で転職活動をしましょう。

金融機関で12年間勤務経験のある私が解説します。
- 金融業界は未経験者でも働ける可能性の高い業界
- 専門知識は入社してからでも習得可能
- 高いノルマ、細かい事務仕事にストレスが溜まる人が多い
この記事では、私の勤めていた金融機関の実際の職務内容をベースに記載します。(身バレが嫌なので詳細は伏せますが、地方銀行・信用金庫・信用組合などを想像してください。)
ですから、メガバンク、政府系金融機関などの銀行の勤務内容と異なる点は多いかもしれません。あらかじめご了承ください。
未経験でも金融業界へ転職できる理由

未経験でも金融業界へ転職できる可能性は十分あります。
ただ、私の前職の会社では、金融業界からの転職者がほとんどでした。

そもそも転職してくる人が少ない会社でした。
現場では「誰でもできる仕事なんだから、人を増やして欲しい。業務効率化には限度がある」という声が挙げられていました。
金融業界の仕事は、本当に誰でもできる仕事です。初めから高度な知識・技能は必要ありません。実務や研修を通して必要なスキルは身に付きます。
以下では、未経験でも金融業界に転職できる理由を解説します。
- 営業職の人材が不足しているから
- 定例業務が多いから
- 多様な人材を求めているから
理由①|営業職の人材が不足しているから
営業職が不足する金融機関が多いのではないでしょうか。ちなみに
金融機関の営業は全業界でもトップクラスの年収を誇っています。優秀な人材ほどキャリアアップを求めて転職しがち。以下のようなキャリアアップが考えられます。
- 地方銀行営業→都市銀行営業→外資系銀行
- 信用金庫営業→保険会社営業→独立系FP
- 信用組合営業→都市銀行営業→コンサルタント
ですから、多くの金融機関で営業職のニーズは高いです。

優秀な人材はどんどんキャリアアップのため転職していきます。
ですから、営業職が足りないと嘆く金融機関は多いでしょう。
ただ、ずっと知識ゼロの状態で営業職ができるわけではありません。
現在の金融業界では、課題解決型金融により取引先企業の支援を行うように求められています。
地域金融機関は、地域企業の真の経営課題を的確に把握し、その解決に資する方策の策定、実行に必要なアドバイス、資金使途に応じた適切なファイナンスなどを組織的・継続的に実施することにより、地域企業の生産性向上を図り、ひいては地域経済の発展に貢献していくことが求められております。
引用:金融庁(外部サイト)
転職後は、コンサルティング業務を担う高度な知識・技能を持つ人材となることが求められるでしょう。

転職時に知識ゼロでもいずれは勉強が必要です。
理由②|定例業務が多いから
金融機関のほとんどの業務はルーティンワークで、未経験転職者でも知識不要で対応できる仕事は多いです。
また、不正防止の観点から人事異動も頻繁で、初めての業務でも実践できるように引継書が用意されている場合がほとんどです。引継書通りに進めれば問題なく業務が行えます。

おおよそ3年〜5年で人事異動になるため、「この人じゃなきゃできない!」と言う業務は少ないです。
定例業務は、具体的に以下のような業務が挙げられます。
- OP (オペレーション)・・・端末を操作して、勘定を操作、顧客情報を登録します。金融機関で事務といえばOPのこと。
- 書類確認・・・ミスがないように相互牽制のためほとんどの書類を2者以上で確認します。
- 集金業務・満期管理・・・営業の基本の仕事で現金集金や預金・保険の満期の案内をします。
- 稟議申請・・・事業性融資において支店長などに決裁をもらうための申請です。
- 決算登録・・・財務情報などを登録します。

ミスを防ぐために人の手を介する業務が多いです。
非合理的ですが、仕方がないのかもしれません。
理由③|多様な人材を求めているから
金融業界ではさまざまな人材を求めています。具体的には以下のとおり。
- IT分野の知識を持つ人材
- 異業種で営業経験の持つ人材
- コンサルティング能力のある人材
- 財務・税務に長けた人材
- 法令やリスク管理の知識がある人材

他の業界で営業を経験した人は歓迎されるでしょう。
一般企業と同じように金融機関にも専門部署があります。ですから、
- 経理事務ができる人
- 情報系の機器に詳しい人
- コンプライアンスの知識がある人
と専門的な知識がある人は専属部署に配属されるかもしれません。
中でも、他の企業で営業経験がある人はきっと重宝されるはず。一般的に無形商品の営業は難易度が高いと言われています。

他の企業で前線で活躍されていた営業が、どのように金融商品を販売するのか。
気になる人は多いはずです。
未経験者が転職しやすい金融業界の職種

「未経験者でも転職できる理由はわかったけれど、自分には専門知識がないから不安」と、感じた人もいるでしょう。
そのような人は比較的難易度が低く、定例業務の仕事を探してみるのもいいかもしれません。
金融業界には、未経験者でも挑戦しやすい職種があります。
- 営業職|ノルマが大変だけど求人豊富
- 事務職|AIによる自動化はしばらく先の話
それぞれの職種について解説します。
上記の職種は働きやすいものの、将来の年収アップにつながらない可能性が高いです。個人営業を目指すなら、漫然と営業活動をするだけでなく「得意な商品を見つける」「ファイナンシャルプランナーとして独立する」など、長期的なキャリアを視野に入れて行動しましょう。

年収アップを目指すなら
はじめは間口の広い職種で経験を積む→専門職種へのジョブチェンジ
しましょう。
営業職|ノルマが大変だけど求人豊富

金融営業は、対象顧客の違いから以下の2種類に分けられます。
- リテール・・・個人向け営業
- ホールセール・・・法人向け営業
リテールの特徴
リテールは、個人向けに金融商品を提供する営業。代表的な商品は定期預金や投資信託、個人向けローン、保険などです。顧客のニーズを理解し、適切な金融商品やサービスを提案する能力が求められます。
ホールセールの特徴
ホールセールは、法人向けに金融商品を提供する営業。代表的な商品は事業性融資ですが、他にもビジネスマッチングや事業承継など業務の範囲は広いです。企業の資金繰りや財務を把握し、適切な課題解決を提案する能力が求められます。
金融業界の未経験転職歓迎では、最も豊富な求人が営業職。中でも生命保険の営業の求人は複数あります。
営業職と聞くと「顧客と話せるだけの専門知識を持っていないから私には無理だよ」と、感じるかもしれません。
ただ、保険営業の敷居は低く、「未経験歓迎」「学歴不問」の求人も多いです。販売の際には資格が必要ですが、簡単に取得が可能。
多くの会社で研修制度が充実しており、パンフレットなどの販促物も充実しています。同行訪問で最初から一人で営業するケースはあまり聞きません。細かな点について顧客に質問された際は持ち帰って回答する旨を話せば大丈夫です。
保険営業の敷居は低く未経験者でも十分転職可能です。ただ仕事を継続するのは多くの人にとって苦痛でしょう。毎月ノルマが設定されていて、競争の世界。時には身内や友人に勧誘しなければなりません。業務を続けると「手数料が高いし、この商品はお客様のためになっているんだろうか?」と疑問を持つこともあります。決して楽な仕事ではないことは頭に入れておきましょう。

未経験転職しやすい職種ですが、長期間働くつもりならば、数字で評価される世界だと覚悟しておきましょう。
事務職|AIによる自動化はしばらく先の話
金融機関は書類文化が根強く、事務仕事が大量にあります。
- 勘定を操作する事務OP
- 顧客情報の入力
- 融資の稟議作成
- 諸届書類の整理
- 投資信託などの受付事務処理
- 保険金請求手続き
他にも大量の事務仕事があります。上記のような事務仕事は誰でもできる定例業務。ですが、効率化が難しい仕事です。
ですから、事務職はどの金融機関でも必要とされるでしょう。

顧客情報を扱うため、AIによる自動化もしばらくは難しそうです。
金融業界への転職を成功させるコツ
ここまでお読みいただいて、金融業界の仕事に興味を持たれた人も多いと思います。
金融機関で働きたいと感じた人に向けて、転職を成功させるためのポイントを考えてみました。
- 本やWebサイトから情報収集する
- 金融の資格を取得する
- 打たれ強さをアピール

金融機関で働いた経験から「こういうことをアピールすれば、面接官の目を引くだろう」と感じるポイントを解説します。
コツ①|本やWebサイトから情報収集する
まずは金融の仕事に関する情報を収集しましょう。
金融の仕事と言っても、漠然としたイメージを抱えている人が多いと思います。
- 保険営業している親戚がいて、私でもできそうかなって
- 最近投資に興味が湧いてきて・・・
- 公務員みたく堅実そうな仕事みたいだし

上記のような漠然とした感覚では、転職は成功しないでしょう。
まずは本やサイトから情報を収集しましょう。
しかし、良い点ばかりを発信している情報源が多く、偏った意見を集めてしまいがち。デメリットなども考慮して選びましょう。
一番良いのは、すでに金融業界で働いている人から話を聞くことです。可能であればインタビューしましょう。
「インタビューなんて気が引ける」という人は、転職エージェントの担当者に質問するのもいいでしょう。
当サイトも金融業界の仕事情報を発信しているので参考にしていただけると嬉しいです。疑問点などございましたら、お問い合わせフォームから連絡してください。
コツ②|金融の勉強をする
金融機関は高度な常に自己啓発が求められます。ですから、貪欲に勉強しなければなりません。

勉強や読書が好きな人は、面接でアピールしましょう。
未経験で転職を目指すなら、業界の書籍は読んでおきたいところ。
- 日経新聞
- 金融に関する有名書籍
- 銀行研修社が出版している専門書籍
たとえば、「ウォール街のランダム・ウォーカー」などは有名すぎる書籍。
自分のしたい業務が定まっているなら、より実務的な書籍を読んでおきましょう。
以下は融資業務に携わるなら読んでおきたい書籍です。

上記のような書籍を読んで、自分の意見を述べられれば転職の成功率をアップさせられるでしょう。
コツ③|打たれ強さをアピール
金融機関ではミスやノルマの未達に対して、厳しい叱責を受ける可能性も。
上下関係が厳しい場合も多く、必要以上に詰められる場面も多いです。
そうした環境に耐えられるだけの打たれ強さをアピールできれば転職に有利でしょう。
たとえば、スポーツや仕事で何かをやり切った実績などの経験があるとアピールできます。

ストレスに耐え切れるだけの継続力があると言う人はアピールできます。
金融業界の企業を選びに後悔しないためのポイント
金融業界の企業選ぶ際のポイントを解説します。
- 労働環境
- 研修制度の有無
労働環境や研修制度について、しっかりした企業か事前にチェックした上で転職するかどうかを判断しましょう。

特に未経験転職を考えている人がチェックすべきポイントを解説。
誤った選択をして後悔しないようにしましょう。
ポイント①|労働環境
労働環境は重要です。現職と働き方が大きく変わると、転職後の環境に馴染めない可能性が高いです。
下記の点を現職と比較しながら検討すると良いでしょう。
- 週休制度
- 平均残業時間
- 転居を伴う異動の有無
特に金融業界は人事異動が多い業界です。見過ごしがちな転勤の有無をチェックしておきましょう。

基本的に週休2日で残業代はしっかりつく。育休制度も充実しているホワイトな企業が多いようです。
一方、住居手当などが付加される企業は少ないようです。
ポイント②|研修制度の有無
未経験転職なら研修制度が充実した企業かどうかチェックしておきましょう。
金融機関では基本的に研修制度が整っていて、不安に思う必要はありません。
そもそも商品を販売する資格を得るために研修が必要な場合も多いです。現場に出てからも定期的に勉強会が開かれる場合が多いです。

ただ、中には以下のような考えの上司もいるので、注意しましょう。
- 新入社員こそガンガン営業に行くべき
- 現場で顧客から学ぶことが全て
上記は考えが悪いとは思いません。しかし、全く商品知識が勉強もさせずに顧客対応させる、現場での事務に配置するなどしても、周囲や本人にも負担が大きいです。
なにより顧客に迷惑がかかる可能性が高いです。研修制度の有無も重要ですが、企業風土や文化なども気にしておきしましょう。
実際に私も新入社員だった頃「今の子は甘やかされすぎている。俺が若い時は研修制度などはなくて、現場に放り出されたもんだ。何も分からなかったが、それでもやってこれた」と、話されたことがあります。
「それを僕に言われても仕方ないんだけどな」と、当時は思っていました。
金融機関を退職した今になって思いますが、以前は預金や融資などは法令が今ほど厳しくなく、販売する商品も少なかったです。バブルで景気が良く資金需要が活発で預金・融資共に収益アップできました。ですから、まだ商品知識が十分でなくても販売できる環境でした。しかし、現代ではそうはいきません。こうした環境の変化を理解できないタイプの上司がいる企業で働くことはやめておいた方がいいでしょう。
未経験者が金融業界へ転職する時の注意点
これまで未経験者が金融業界へ転職する方法について解説してきました。
ただ、入社後のギャップに苦しまないためにも、金融業界へ転職する際の注意点についてもぜひ知っていただきたいです。
自分が本当に金融業界へ進んでもよいのか、チェックしておきましょう。

金融業界で勤務経験のある私が忖度なく解説します。
注意点①|資格地獄を覚悟しておく
金融業界では、年齢を重ねても資格取得が必要です。実際に業務を行う際に必要な資格は少ないです。
携わる仕事にもよりますが、証券外務員資格、保険募集人資格を保有すれば基本業務に支障ありません。ただ、毎年のように人事考課で自己啓発の意欲をアピールする必要があります。
人によっては受験料だけ払って、受験しない人もいるほど。休暇中に勉強、試験を受験しないといけません。資格地獄とも言われるゆえんです。
ですから、勉強に抵抗がない、知識欲が旺盛といった人でなければ金融機関に勤め続けるのは難しいかもしれません。
注意点②|法令・ミスに厳しい
金融機関は法令遵守にとても厳しいです。退勤時に机の施錠管理は当然。鍵がかかっていないだけで、監査の指摘事項にあがります。個人情報の管理は厳重ですし、持ち出しする際は業務上必要な場合でも上司の確認が必要です。
また、書類上のミスにも厳しく、ミスをすれば事務ミスの登録、場合によっては顛末書・始末書の提出が必要です。

厳しい規制に「たしかによくないけど、そこまで怒られないといけないようなミスなのか」と私は疑問を抱いていました。
法令遵守意識の高さはもちろん、ミスに対して向き合える精神力が必要です。
注意点③|人事異動が多い
金融業界では多くの企業で人事異動が頻繁に行われます。特に銀行や証券会社などの大手企業では、数年ごとに部署が変わることが一般的です。
頻繁に人事異動があるということは、同じ職場や職務に長く留まることが少なく、毎回新しい環境に順応する力が必要になります。

人事異動が多いため、毎年新たな人間関係が作られます。
社内でもコミュニケーション能力が必要です。
営業、審査、リスク管理など様々な部門があり、異動によってまったく異なる業務に就くことが珍しくありません。

営業で前線で活躍していた人が、まさかの人事部に配置。といったことも起こりえます。
基本的に内示が出れば、人事異動は特段の家庭の事情等がない限り断れません。
自分の希望が通るケースも少ないです。計画通りにキャリアアップできない可能性もあるので、注意しておきましょう。
まとめ
金融業界への転職は、未経験者にとってもチャンスがあります。
自己分析やスキルアップを行い、適切な情報収集と応募活動を進めることで、成功への道が開けるでしょう。自分の強みを活かし、金融業界でのキャリアを築く第一歩を踏み出してみてください。