銀行員が「パソコンを使えない」と言われる理由とは?スキルアップのコツを解説
- 銀行員だけどパソコンを使えないとダメ?
- 金融機関で働くならパソコンスキルは不要じゃないの?
銀行員はパソコンが得意。こんなイメージがあるかもしれません。
店頭で端末を操作しながら窓口の女性が事務処理しているシーンを見かけたことがある人も多いでしょう。
しかし、金融機関の窓口にある端末は特殊な端末。顧客情報の流出を防ぐため、必要な事務のみが可能。Microsoft Officeなどは使用できません。ですから、パソコンが増えてな銀行員は多いです。
私も昔はパソコンが苦手でした。すぐに不具合が起こりますし・・・
私は銀行員ではありませんが、金融機関で働いていた経験があります。パソコンが使用できない職員も多くいました。「パソコンを使える」と言っているのは、一部の本部の職員だけでした。
本記事では「銀行員がパソコンを使えない」と言われる理由と対策について解説します。
【具体例あり】金融機関でパソコンを利用するのは定型文章の入力のみ
「銀行員がパソコンを使えない」と言われる理由を解説する前に、金融機関で具体的なパソコンを利用する事例を紹介します。
端末は銀行業務に必要な操作をするために使用
金融機関で使用する端末は、銀行業務に必要な操作のみが可能。
大きく勘定系の操作と情報系の操作をするために行われます。
勘定系の操作
口座の入出金、為替振込、融資の登録・融資の実行のために使用
情報系の操作
顧客の口座情報や融資の情報を照会するために使用
日中は多くの場合、銀行業務で必要とされる端末操作をしています。
基本的にインターネットを閲覧する、WordやExcelで資料を作成などは日中作業をする機会は少ないです。
業務係が作成するパソコン資料
業務係がパソコンを使用する場合は主に以下の事例が多いです。本部が作成した定型文書に数字を入力して返信する形がほとんどなので、高いスキルは求められません。
どちらかというと、数字の入力相違がないかなどの正確性が求められます。
- 会議・研修の報告書
- 預金残高の報告書
私は業務係経験が少なく詳しく知りません。しかし、締後(現金精査後)に本部への奉告書類などを作成されていました。
渉外係が作成するパソコン資料
業務係がパソコンを使用する場合は主に以下の事例が多いです。幅広い業務に携わるため必然的に作成する資料が中心。
- 預金・融資の残高推移シート
- 営業会議の資料
- 融資先の交渉管理シート
- 預かり資産販売時の面談
上記の書類はほとんどが「前回と同様」または「本部の報告書式に沿って入力する」だけで対応可能です。
融資係が作成するパソコン資料
融資係がパソコンを使用する場合は主に以下の事例が多いです。主に審査に添付する書類が大半。
- 資金繰り表
- 工事受注明細
- ローカルベンチマークシート
他に進捗管理が高度なパソコンスキルを求められる作業はほぼありません。
本部が作成するパソコン資料
本部がパソコンを使用する場合は主に以下の事例が多いです。
- 営業店の数値管理
- 監督官庁への計数報告書
営業店よりは高いスキルが求められますが、高度な知識は必要ありません。Excelで言うと関数や図表を挿入できるといった程度です。
私は経営企画部に所属していて各部の資料を閲覧する機会が多かったですが、審査部などが監督官庁に提出する書類の精度は高かったです。
ちなみに経営企画部はHPの運用も必要なため、HTML/CSSの知識が求められる場合も。
銀行員が「パソコンが使えない」と言われる理由
上記のように金融機関で必要なパソコン業務は定型化されている場合が多いです。
パソコン操作が不得手な職員でも職務を遂行できるため、合理的な仕組みができていると言えます。
反面、スキルが身に付かず「パソコンが使えない」と評価をされる恐れもあります。
金融機関に勤務していた際、地域の企業経営者とともにオンライン会議をしていたのですが、IT知識に疎く恥ずかしい思いをした経験があります。
理由①|銀行業務のための端末
銀行業務では、主に専用の業務端末を使用して日々の取引処理や顧客対応を行っており、Microsoft Office (Word、Excel、PowerPointなど)やインターネットブラウザなどの一般的なツールに触れる機会が少ないです。
本部勤務になり初めて仕事でメールを使用することに。
また、セキュリティ上の制約から、外部のソフトウェアやアプリケーションの利用が厳しく制限されている環境で働いています。
こうした環境のため、一般企業では当たり前とされている基本的なパソコンスキル(文書作成、表計算、プレゼンテーション資料の作成など)を実践的に学ぶ機会が非常に少ないです。
理由②|手書き文化の影響
多くの銀行では、契約書や稟議書などの重要な文書では手書きでの作成・承認が慣習として根強く残っているケースも。
電子化が進んでいるようですが、手書きによる書類管理はいまだに多いようです。
最近は電子契約や電子稟議の導入も実施されていますが、DX化の余地はまだまだありそうです。
特に、法的な観点から書類を残さなければならない場合も。
手書き文化が根強い状況では、パソコンの活用をする機会も少なくパソコンが使えなくなっても仕方ないでしょう。
従業員の世代交代がなければ、状況は変わらないと思います。
理由③|金融の勉強が優先
銀行員は金融商品、法規制、リスク管理、コンプライアンス、投資戦略、市場分析など、幅広い専門的な金融知識の習得しなければいけません。
さまざまな金融商品や新しい法規制に対応するため覚えるため、他の知識やスキルを身に付ける時間は少ないです。
日々の業務と金融知識の習得に時間を取られ、パソコンスキルの向上に割ける時間が限られてしまいます。
基本的なITスキルの習得が後回しになりがちです。
金融知識といっても幅広く、パソコンやITの知識を学ぶ時間がありません。
銀行員に必要なパソコンスキルとは
銀行員には、業務の効率化と生産性向上のために、パソコンスキルが求められています。
以下では必要なパソコンスキルについて解説します。
姉妹サイトの合格ITパスポートでは、ITの基礎資格であるITパスポートを中心にITスキルについて解説しています。
業務効率化のための基本スキル|Microsoft Office
全ての社会人にとって必須ツールといっても過言ではないMicrosoft Office。
Excel、Wordは使用頻度も高いので使いこなせるようにしておきたいですね。
Excel
基本的な関数の使い方、ピボットテーブルでのデータ分析、グラフ作成による視覚化、データの並べ替えやフィルター機能の活用など、業務効率化に欠かせないスキル。
Word
文書のレイアウト設定、テンプレートの作成と活用、校正機能を使った文章チェック、目次や索引の自動生成、コメント機能を使った共同編集など、ビジネス文書作成に必要な機能。
PowerPoint
説得力のあるスライド作成、テーマやマスターの活用、グラフィックやアニメーションの効果的な使用、発表用ノートの作成、画像編集など、プレゼンテーションの質を高めるスキル。
デジタルツールの活用
メール管理
効率的なメールの仕分けや返信スキル、メールの優先順位付け、フォルダ整理による整理整頓、添付ファイルの適切な取り扱い、CCやBCCの使い分けなど、ビジネスメールに必要な基本的なスキル。
オンラインツール
TeamsやZoomを使ったリモート会議の運営方法、画面共有やチャット機能の活用、オンラインでのコミュニケーションマナー、バーチャル背景の設定、音声・映像トラブルへの対処など、オンラインでの円滑なコミュニケーションに必要なスキル。
セキュリティ意識の向上
銀行業務では顧客の個人情報や金融取引データを扱うため、情報漏洩は銀行の信頼性と存続に関わる重大な問題となります。
このため、セキュリティに関する深い理解と適切な対応スキルが不可欠です。
具体的には、強固なパスワードの設定と定期的な更新、二要素認証の活用、怪しいメールやURLの見分け方、ソーシャルエンジニアリング攻撃への対処方法など、包括的なセキュリティリテラシーを身につける必要があります。
パソコンスキルを向上させる3つの方法
銀行員のパソコンスキル向上は、計画的かつ継続的な取り組みが重要です。
特に、自分の現在のスキルレベルを正確に把握し、具体的な目標を設定することから始めることをおすすめします。
以下では、効果的なスキルアップの具体的な方法を紹介します。
無料で学べるオンライン講座を活用
ITスキルを向上させるための無料オンライン講座が数多く提供されています。以下のような選択肢があります。
- Microsoft公式のOfficeトレーニング:ExcelやWordなどの基本操作から応用まで学べます。
- YouTube上の解説動画:実践的なテクニックを視覚的に学習できます。
- プログラミング学習サイト:基礎的なITリテラシーを身につけられます。
自分のペースで学習を進められる上、費用もかからないため、効率的にスキルアップを図ることができます。
職場内で学ぶ
同僚に教わる
職場には意外とITに詳しい同僚がいる場合が多いです。中には自分だけの知識として
気軽に質問することで、実践的なスキルを身につけることができます。また、同僚からの直接指導は、自分の業務に即した効率的な学習方法を見つけるのに役立ちます。
社内研修を活用
会社内の研修が設けられている場合は、積極的に参加してみましょう。無料でスキルアップできます。
研修がない場合は自己研さんの奨励制度などを調べてみましょう。民間の講座を受講する場合でも、会社から補助金が出る可能性もあります。
実践でスキルを磨く
実務で使えるタスクに積極的に挑戦することが重要です。
日々の業務レポートの作成や、データの整理、簡単な資料作成など、身近なタスクから始めることをおすすめします。
自分の家計をExcelで管理する
NISAについてわかりやすく図解で表現してみる
など、業務と関係の深い課題を自分で見つけて取り組んでみましょう。
小さな成功体験を一つずつ積み重ねていくことで、自然とスキルが向上していきます。また、失敗を恐れず、新しい機能や効率的な作業方法にも挑戦することで、より実践的なスキルを身につけることができます。
銀行員がパソコンスキルを身につけるメリット
銀行員がパソコンスキルを身につけることで得られるメリットは、業務効率の向上やキャリアの幅の拡大など、多岐にわたります。
特に昨今のデジタル化が進む金融業界において、パソコンスキルの習得は、単なる業務効率化だけでなく、キャリアの可能性を大きく広げる重要な要素となっています。以下、主なメリットについて詳しく見ていきましょう。
業務効率の向上
定型作業の自動化により、データ入力や資料作成にかかる時間を大幅に削減し、より付加価値の高い業務に時間を充てることが可能になります。
キャリアの幅が広がる
デジタルスキルを持つことで、フィンテック部門への異動や、IT企業を含む幅広い業界への転職機会が増え、より多様なキャリアパスを選択できるようになります。
ストレスの軽減
効率的な業務処理により作業時間が短縮され、締切に追われるプレッシャーが軽減します。また、デジタルツールを使いこなせることで、周囲からの支援を必要とする機会も減少し、心理的負担が軽減します。
パソコンスキルが身に付かずに出世した場合のリスク
パソコンスキルが不足した状態で管理職に就くことは、個人のキャリアだけでなく、組織全体のパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性があります。
特に、デジタル化が加速する現代の銀行業務において、リスクになりかねません。
部下とのコミュニケーションギャップ
デジタルネイティブ世代の部下は、ITツールを使った業務を当たり前と考えています。
パソコンスキルが低いと、「時代遅れ」「頼りない」と思われるリスクがあります。
- Excelでデータ分析を依頼されたが、何をどう指示すればいいか分からない。
- オンライン会議でツールを使いこなせず進行がスムーズにいかない。
デジタルトランスフォーメーションへの対応が遅れる
銀行業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。
IT知識が不足していると、戦略的な意思決定に遅れが生じるリスクがあります。
- AIやデータ分析を活用した新しい営業手法を理解できず、部下任せになる。
- 新システム導入時に現場の課題を正しく把握できない。
キャリアの限界が訪れる
デジタルスキルが求められる現代のビジネス環境において、ITリテラシーの不足は昇進や部署異動の大きな障壁となる可能性が高まっています。特に、デジタル化が加速する銀行業界では、基本的なITスキルの欠如が、キャリアの成長機会を著しく制限してしまう恐れがあります。
特に管理職以上のポジションでは、経営層とのデジタル戦略に関する議論や意思決定の場面が急増しており、デジタルツールの活用方針や新技術導入に関する共通理解が不可欠となっています。このため、ITリテラシーの不足は、上級管理職としての適性評価にも影響を及ぼす可能性があります。
パソコンスキルが身に付かない場合に磨くべき3つのスキル
パソコンスキルが身につかない場合でも、代替となる重要なスキルを磨くことで、キャリアの成長を維持することができます。以下では、特に注力すべき3つのスキルについて解説します。これらのスキルを効果的に組み合わせることで、デジタル時代においても価値ある人材として活躍できます。
リーダーシップスキル
部下を動かすための「人を巻き込む力」は、どの時代でも重宝される重要なスキルです。特に、組織全体の目標達成のために、異なるスキルセットを持つメンバーを効果的に統合し、一つのチームとして機能させる能力は、管理職として不可欠な資質となります。
- 具体策: チーム全体のスキルを活かすマネジメント力を高める。各メンバーの強みを理解し、適材適所で活躍できる環境を整備することで、組織全体のパフォーマンスを最大化することができます。
- 実践: ITスキルの高い部下に頼りながら、適切に指揮を執る。その際、部下の専門性を尊重し、彼らの提案や意見に耳を傾けることで、より効果的なチーム運営が可能になります。
専門的な業務知識の向上
パソコン操作が不得意な場合でも、銀行業務に関する深い専門知識と豊富な実務経験を持っていることで、周囲からの信頼を確実に獲得することができます。特に、金融商品や規制に関する専門的な知見は、デジタルスキル以上に価値のある資産となります。
- 具体策: 金融商品の仕組みや法規制の理解を深め、市場動向の分析力を磨き、リスク管理の知識を向上させることで、より包括的な業務知識を構築する。
- 実践: 蓄積した専門知識を活用して、業務全体を広い視野で捉え、戦略的な判断やリスク評価に基づいた的確なアドバイスを提供する。これにより、チーム全体の業務品質向上に貢献することができる。
コミュニケーション能力
「何を指示するべきか」を明確に伝えることができれば、たとえITスキルが十分でない場合でも、周囲のメンバーは必要なサポートを提供しやすくなります。また、的確な指示は業務の効率化にもつながり、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献します。
- 具体策: 明確で具体的な指示の出し方とタイムリーなフィードバックのスキルを磨き、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションを確立する。また、相手の理解度に合わせて説明の粒度を調整できる柔軟性も重要。
- 実践: 日常的なメールや報告書の作成時に、目的、期限、期待される成果物を明確に示し、要点を簡潔に整理して伝える練習を重ねる。また、対面でのコミュニケーションでも、議事録作成や会議の進行などで実践的なスキルを磨く。
ITスキル不足への対応策
ITスキル不足は現代のビジネス環境において大きな課題となっていますが、適切な対応策を実践することで、この課題を克服することができます。以下では、具体的な対応策について解説していきます。
最低限のIT知識は身に付ける
最低限のIT知識を身につけることは、現代のビジネス環境では避けて通れません。特に以下のような基本的なスキルは、管理職として必須となります:
- Microsoft Officeの基本操作(Word、Excel、PowerPoint)
- ビジネスメールの作成と管理
- オンライン会議ツールの使用方法
- 社内システムやデータベースの基本的な操作
これらのスキルは、オンライン学習プラットフォームや社内研修を活用することで、効率的に習得することができます。特に、実務で頻繁に使用する機能に焦点を当てて学習することで、短期間での上達が期待できます。
ITが得意な部下とコミニケーションをとる
ITに精通した部下との良好なコミュニケーションは、組織全体のデジタル化推進において重要な役割を果たします。以下のポイントを意識してコミュニケーションを取ることで、効果的な協力関係を構築できます:
- 定期的な情報共有:IT関連の課題や改善点について、オープンな対話の機会を設ける
- 専門性の尊重:部下のIT知識やスキルを認め、その意見や提案を積極的に取り入れる
- 明確な目標設定:デジタル化に関する具体的な目標を共有し、チームとして取り組む方向性を示す
このような関係性を築くことで、ITスキルの不足を補いながら、組織全体のデジタル対応力を向上させることができます。また、部下の成長機会を提供することにもつながり、win-winの関係を構築できます。
まとめ
本記事では、銀行員のITスキル不足の背景と対応策について解説しました。主な要点は以下の通りです。
- 業務システム中心の環境、手書き文化の影響、金融知識優先の姿勢により、一般的なITスキルが身につきにくい環境があります。
- しかし、リーダーシップ、専門知識、コミュニケーション能力など、他の重要なスキルを活かすことで、ITスキル不足をカバーすることが可能です。
- 最低限のIT知識は身につける必要がありますが、ITに詳しい部下との良好な関係構築により、組織全体としての効率を高めることができます。
デジタル化が進む現代において、ITスキルの向上は避けて通れない課題ですが、段階的な学習と適切な協力体制の構築により、十分に対応可能です。