【合格体験記】独学で簿記2級に挑戦!落ちた原因と勉強法を解説
- 日商簿記2級って難しいみたいだけど、独学で合格できる?
- 他の試験と比べた難易度はどれくらい?
- 簿記2級を勉強しているけど、受かる気がしない・・・
日商簿記はビジネスに役立つと評判の人気資格。資格手当がある、転職で役立つなどの理由から2級まで目指すという方も多いでしょう。しかし3級と比べると2級の難易度はかなり上がります。
過去問を見て「独学で合格できそうにないなぁ。」と受験をためらう方も多いはず。ですが、簿記2級は独学でも合格可能。演習を十分積めば、誰でも簿記2級に合格できます。
ただ簿記の勉強は癖があるので、初学者の方には講座の受講がおすすめです。
本記事では、簿記2級に独学で挑戦した私が解説します。
- 簿記2級は独学でも合格可能
- 演習量がものを言う試験
- 知識ゼロの状態で受験するなら講座の受講がおすすめ
簿記2級受験当時の私のスペック
私は独学で簿記2級に合格しました。しかし、実は大学では会計を専攻しており、金融機関で12年働き受験当時35歳でしたから、すでに簿記に関する十分知識は持っていました。
- 大学で財務会計を専攻
- 金融機関に勤務
- 簿記の勉強は勤務後12年経ってから
この点を了承いただいた上でお読みください。
大学では財務会計を専攻|1級まで取得すればよかった
そもそも私は大学では財務会計を専攻していました。財務会計を学ぶためには簿記の知識は必須です。このため、大学生の時点で簿記の勉強は一通り終えていました。
大学の講義では日商簿記1級の試験範囲についての勉強も。「大学生の時に日商簿記を受験していれば、こんなに苦労せずに済んだなぁ。」と考えながら、簿記2級の試験勉強をしていました。
当時の大学の教授の「簿記は試験を受験した後は忘れがちですから、短期集中で勉強した方が効率的です。」という言葉を信じて、素直に簿記1級まで取得すればよかった、といまだに悔やんでいます。
卒業後就職|簿記がなくても金融機関で働けた
簿記の3級すら取得していなかった私ですが、大学卒業後に金融機関に就職できました。
金融機関では簿記の取得が推奨されていますが、就職時の必須条件とされている場合は少ないです。
就職直後に早めに取得すればよかったのですが、銀行業務検定などの資格取得が中心になって簿記を受験する機会を失っていました。
簿記を取得しなくても昇進要件を満たしていたため、あまり気にしませんでした。
簿記の勉強は企画部への配属がきっかけ
金融機関で働き続けて10年。すでに融資業務を通して、ある程度財務分析に必要な知識は持っていました。
しかし、就職後ずっと営業店に配属されていた私が本部の企画部勤務になって、簿記の取得を意識することに。
企画と言えば、決算作成にもかかわる部署。と言うわけで、「最低でも簿記2級は取得しないといけないぞ。」と今更ながら考え、簿記の勉強を再開することに。
当時は仕事が忙しく、過去問を2周程度しか勉強できませんでしたが、簿記3級に合格できました。
ちなみに簿記3級を取得した時の上司の反応は「まぁ、3級はパズルみたいなものだからな。」という返答でした。金融機関では3級の取得はほぼ評価されないと思っていいでしょう。
その後金融機関を退職し、転職活動をきっかけに簿記の勉強を再開し2級を目指すことにしました。
簿記2級は難しい?他の試験と比較
簿記2級は受験者から「受かる気がしない」という声も聞かれる難関資格です。たしかに簿記2級は専門的な知識が問われ、範囲も広いため難しい試験と言えます。
簿記が難しいと言われる理由と他の試験と比べた難易度について解説します。
試験範囲が広く難しい
簿記2級の試験範囲は商業簿記・工業簿記の2分野から幅広く出題されます。試験範囲は広いですが、専門的で細かい知識が問われます。
このため「仕訳問題なら答えられるけど、貸借対照表や損益計算書にはどう表記していいのかわからない」という方も多いでしょう。
したがって、範囲は広いものの、それぞれの分野について理解が足りないと不合格になる試験でもあります。
間違いが許されない試験だから難しい
簿記2級の試験では、関連する問題が連続して出題されることも。
精算表の作成や標準原価計算、CVP分析の問題では1問目でミスをすると、続く問題で考え方が合っていても間違う可能性があります。
見直す時間があればいいのですが、問題量に対して試験時間は短く、検算する時間はほぼないと思っていいでしょう。少しの間違いも許されない試験だから難しいと言えます。
学生の時に習ったことのない知識だから難しい
商業高校出身でもない限り、学生時代に簿記の勉強をした経験のある方は少ないでしょう。簿記では学生の頃に積み重ねてきた知識があまり役立ちません。
工業簿記では一次方程式の知識が一部で役に立ちますが、数学の知識が役に立つ場面は少ないでしょう。
社会人になってから、新しいことを学ぶのは大変です。だから、勉強が辛いと感じる方がいるかもしれません。
【体感】他の試験との難易度の違いはどれくらい?
私の実体験をもとに感覚で他の試験との難易度の差について解説します。
難易度は簿記3級の3倍
簿記2級は3級と比べると、合格までに必要な勉強時間は2倍から3倍と言われています。
試験範囲も3級は商業簿記のみ。しかし、2級は工業簿記も加わるなど難易度には大きく異なります。
実際に私も3級の3倍程度の時間を割いて勉強しました。
そもそも簿記の知識はある程度保有していたため、3級は過去問2周程度で合格できる程度の難易度でした。しかし、2級は基礎的な仕訳問題でもつまづくような内容があり、工業簿記も難しいです。
「3級に合格したから2級も簡単に合格できるだろう。」と油断せずに、難易度は全く異なることを覚悟して勉強に臨んでください。
銀検の財務2級よりも難しい
受験当時の私は銀行業務検定の財務2級に合格していました。銀行業務検定は金融機関で働く方向けの試験で、財務2級は財務の最上級の試験です。試験内容は完全記述式で合格率も簿記2級と同じ程度。
このように書くと「それだけ財務の知識があれば、簿記2級は簡単に合格できるんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、試験内容は異なる部分も多く、新たに勉強が必要な分野も多かったです。
個人的な感覚で言うと、次の理由から財務2級の方が簡単だと感じました。
- 財務2級ほど細かい知識が問われない
- 財務2級は記述式だが、解答方法が定型化されている
- 財務2級の試験時間は余裕がある
- 財務2級の頻出問題はほぼ固定化されている
- 財務2級は合格点は低い
FP2級よりも難しい
FPは簿記とよく比較される人気資格。勉強時間から比べると、FP2級よりも簿記2級の方がやや難しい試験のようです。
FP2級と簿記2級取得者の私の体感では、簿記2級の方が難しかったです。FPは単純暗記で乗り切れ、簿記のように「難しくて理解が難しい概念」はありませんでした。
理由は次のとおり。
- FP2級の方が幅広い知識が必要だが、知識としては浅い
- FP2級は学科・実技の2段階構成だが、一部合格制度があり受験しやすい
- FP2級の方が計算問題が少なく、単純暗記で乗り切れる問題も多い
- FP2級の方が問題数に対して試験時間に余裕がある
なぜ独学で受験した?講座を利用しなかった理由
今から簿記を勉強しようと考えている方には、講座での勉強を強くおすすめします。簿記は癖があり、独学で勉強するのは難しいからです。
しかし、私は次の条件が整っていたので、独学で合格できる自信がありました。
- 大学生の時に簿記を勉強していた
- 財務の試験に合格していた
- 融資担当で実務経験があった
大学生の時に簿記を勉強していた|本当に役だった
私は経済学部卒で、財務会計を専攻していたため、すでに簿記の知識は一通り有していました。
会計と簿記は密接に関係していますが、ざっくり感覚的に説明すると、
- 会計は会社の財務状況を報告するプロセスや基準を勉強する学問
- 簿記は会計帳簿の記載する方法を勉強する学問
このため、簿記は会計を学ぶ上で必須分野。
ですから大学の講義で簿記を一通りは学んでいました。講義では日商簿記1級レベルの問題も勉強していたので「2級レベルなら、独学で合格できるだろう」という自信もあったわけです。
大学を卒業してから12年以上経ち、もはや「こんなこと習ったかなぁ。」程度まで、知識も薄れていましたが、当時の知識があった分勉強は苦痛ではありませんでした。
財務2級に合格していた|あまり役に立たなかった
銀行業務検定という金融機関で働く方向けの資格があります。
試験の中でも簿記の知識が必要な財務試験の最上級である2級に合格していたため「簿記2級もそれほど苦労せずに、合格できるんじゃないか。」と考えていました。
実際は財務と簿記の試験内容は大きく異なっているため、苦労しました。
融資担当で実務経験があった|全く試験で役に立たなかった
私は金融機関で融資の実務経験もありました。融資を審査する際に貸借対照表や損益計算書は、日常業務でよく目にします。
「十分実務経験があるんだから、試験は簡単だろう。」とも思っていました。実際はそんなことはなく、実務経験は簿記の試験で全くと言っていいくらい役に立ちませんでした。
「財務分析の知識が、CVP分析で少し役立つかも」というレベルです。
簿記2級に落ちた原因は3つ
上記のように「独学で合格できるだろう。」と変に自信を持っていた私は6月の一斉試験にチャレンジにしてあえなく66点で不合格となりました。
つまるところ原因は勉強不足の一点に集約されるのですが、大きく分けると次の3点です。
原因①:演習量が不足していた
不合格となった一番の原因は演習の量が不足していたことです。
テキストや問題集で個別の項目や概念を理解するのは大切。しかし、個別の問題に集中するあまり、本番の過去問題の演習がおろそかになってしまっていました。
個別の理解し難い概念にとらわれず、ある程度の知識が備わったら過去問を演習してさまざまな解法パターンを覚えることをおすすめします。
原因②:苦手分野が出題された
これは言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、試験で苦手な問題が出題されたことも大きな不合格の要因です。
ちなみに私は連結会計の理解がどうしても難しく、合格した際は連結会計が出題されなかったこともあって容易に合格できました。
簿記2級の出題範囲は広いですが、試験は大問5問で構成されます。つまり、得意分野・苦手分野がある方にとっては、運に左右される部分も大きい試験。
得意分野だけで構成された試験なら、合格する可能性も高まります。
うまくできた部分と全く歯が立たなかった部分の差が大きかったです。
原因③:思った以上に時間が不足
簿記2級は時間との勝負です。「試験時間は90分、大問一つにかけられる時間は18分」と聞くと、そこそこ時間に余裕がありそうな気がします。
しかし、実際に問題を解いてみるとわかりますが、とても90分では足りません。
よほど演習を積まない限り、おそらく解答を見直す時間はほぼないでしょう。
初めて受験した時は想定以上に時間がかかり、試験時間が終了した時に「これは多分受かってないだろうなぁ。」とわかりました。
ギリギリ時間いっぱいで、なんとか問題の空欄を埋め切りました。
合格するために行なった対策
不合格となった原因を踏まえて、対策を考えました。
過去問2冊で演習を積む
66点で不合格となった原因を分析した結果「テキストの問題集を解くことに集中しすぎた。もっと過去問演習を徹底しよう。」と考えて演習を積みました。
テキストに加えて、過去問の演習を終身に勉強することに。理解できなかった部分は何度も復習して勉強しました。
間違った問題は徹底的に解説を読んで、わからない部分をなくすことに努めました。
ただ、問題の位置や場所も覚えて、解説も読み切ってしまったので「別の過去問で勉強しよう」と思い、他の過去問を購入して、さらに演習を積みました。
出題される問題はほぼ同じでしたが、中には違う内容の問題も。さらに別の角度からも解説がされていて、勉強が深まりました。
分野別勉強方法
簿記2級では大問5問で構成され問題数が少ないため、頻出問題の攻略が合格の鍵を握っています。
このため各分野別の頻出論点を徹底的に勉強する必要があります。
基本的にどの分野もくまなく勉強しましたが、連結会計だけはどうしても理解ができずいわゆる捨て科目になりました。逆に仕訳と工業簿記は点取り問題だと思って過去問は完全にできるまで、勉強しました。
仕訳|全問正答するつもりで勉強
仕訳問題は大問1で出題されます。また大問4の工業簿記でも時々出題されます。過去問合格を狙うなら仕訳問題は確実に得点しないといけません。
仕訳問題はかなりやり込みました。頻出の減価償却などはもちろんリース取引、税効果会計、外貨建取引なども過去問は全問正解できるまで覚え込みました。
仕訳は点取り問題だと思っていたので「絶対全問正解する!」と思ってやり込みました。
連結会計|捨てるつもりで挑んだ苦手分野
連結会計は簿記2級試験でも頻出項目ですが、理解の難しい分野です。私も勉強して最も苦痛に感じた分野。アップストリーム・ダウンストリームあたりでつまづいてしまいました。
どうしても理解が難しく最終的に捨てる覚悟で試験に臨みました。たまたま運よく、私が受験した時は連結会計ではなく、有価証券が出題されて合格できました。
連結会計が出題されたら、5割くらいの得点で諦めようと思っていました。
決算整理|とにかくスピード重視の勉強
決算整理は毎回も大問3で出題されます。ひとつひとつ丁寧に解答すれば難しくはないのですが、なにぶん時間が足りないのがなにぶん時間が足りません。
しかも、ひとつの仕分け処理でミスがあると、その後の問題に影響を与えるので、正確に解答しないといけません。
少し難易度の高い分野も出ますが、税効果会計・減価償却などは過去問は完全に解けるようにしました。理解よりも、とにかく速く解けることを意識して勉強しました。
たとえば、減価償却の処理などは問題文を注意して読まないと間違う可能性が高いです。過去問でさまざまなパターンを覚えて、本番でどんな問題が出題されても回答できるようなりました。
大問3の決算整理は時間がかかるので、試験本番で最後に解くのがセオリーです。
原価計算|全てのパターンで得点できるように勉強した
原価計算は高得点を取得しやすい分野なので、力を入れて勉強しました。個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算です。
各原価計算の計算は混乱しがち。一つ一つの問題を解いて覚えていきましょう。
過去問の類題を解いて知識を整理するのがおすすめです。
特に力を入れて勉強したのは総合原価計算と標準原価計算です。
総合原価計算はパターンを変えて出題されることが多く、加工進捗度や仕損費の計算方法が出題方法が異なるので、集中して勉強に取り組みました。
標準原価計算も確実に得点が見込める問題。シュラッター図が作成できれば、得点は容易いです。
「シュラッター図を使わずに、方程式で解いた方がわかりやすい」と感じる方もいるようですが、「知識ゼロから簿記2級の最短合格を目指す」という方にはシュラッター図の利用がおすすめです。
CVP分析|絶対満点を取るつもりで挑戦
CVP分析は、試験本番で出題されたら必ず完答できるように勉強しました。
CVP分析は損益分岐点比率、貢献利益、安全余裕率の計算など財務分析と密接に関係している分野です。
すでに金融機関での実務経験や銀行業務検定の財務2級も取得していたので、苦労せずに本番レベルの問題が理解。CVPは頻出問題です。定型の解法を覚えれば、それほど苦労はしません。
日商簿記2級のよくある質問
勉強時間はどれくらいかかった?
勉強時間は1カ月くらいで、100時間もかかっていないくらいです。
ただ私はすでに大学で簿記を専攻していたことや、財務についても勉強していたこと、簿記3級もすでに取得なども加味されるため、かなり短くなっていますのでご注意を。
要領の良い方なら、もっと短い時間で合格できても不思議ではありません。
ちなみに2級の平均勉強時間は300時間が目安とされています。
どのテキストを使った?
解説がわかりやすかった「スッキリわかるシリーズ」(滝澤 ななみ 著)を使用しました。
過去問は「スッキリわかる」と「合格するための本試験問題集」(TAC出版)の2冊を使って演習を積みました。
演習はたくさん積んでも、損はしないので、余力がある方は予想問題集にも手を伸ばしてみてもいいと思います。
テキストだけで独学合格できる?
簿記2級はテキストだけでも独学での合格は可能です。
ですが、基本的にはおすすめできません。私はある程度前提知識があったので乗り越えられましたが、全く簿記をはじめて勉強する方は通信講座などで基礎をしっかり学んだほうがいいでしょう。
簿記2級はコスパに合う資格
簿記2級は難易度の高い資格です。しかし多くの仕事で役立つ資格。独学でも合格可能ですが、講座を利用してもお金をかける価値は十分にあります。
- 昇進に役立つ場合も
- 資格手当が出る場合も
- 転職でも一定の評価を受ける
ぜひ簿記2級を取得して、お金に関する知識を深めましょう。